市原真. 病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと
ISBN:978-4479393191
「がん」は確かに巨悪なのだが、ゴジラみたいにいきなり町を踏みつぶしてすべてを終わらせてしまうようないち俳優・いちキャラではない。どちらかというと、戦略と知謀に長けた司令官が率いる、強大な軍隊のイメージだ。「がん」との戦いは、1対1の決闘方式では描けない。必ずといっていいほど、戦記物になる。敵は大軍。そして、患者も一人ではない。患者の体内には、白血球やマクロファージ、樹状細胞などの多くの軍隊がいる。がん細胞たちが舞台に上がるとき、これらの免疫細胞たちが対峙して、にらみ合う。ここに医療者たちが参戦する。医療者たちは、軍隊を率いて効率的にがんを倒すために、司令官の役割を果たしたり、ときに飛行機に乗って敵の軍隊に爆弾を落としたり、あるいは味方の軍隊たちに食事を提供する後方支援を行ったりと、陰になり日向になり活躍する。医療シアターはまるで関ヶ原とか川中島の合戦場のような様相を示す。
(略)
たとえば、この項の最初で説明した画像診断や血液検査。これらは、「索敵」でもあり、自軍の実態調査でもあるが、これらのでき如何によって、医者をはじめとする医療者たちが今後どのような方策を立てるかが決まってくる。まさに情報戦だ。
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